KYLIE JOURNAL No.000
land down underは、
岡山県倉敷市に暮らす池上慶行が2020年末に創業し、
ディレクションからデザイン、生産管理、販売と
現状は個人で運営しているアパレルレーベルです。
立ち上げから2年半が経過していることに気づき、
これまでにやってみたことを振り返るとともに、
変化してきた自分のなかの意識や
LDUがこれから目指していきたい姿を
ここで一旦小さくまとめたいと思いたちました。
「 サーキュラーエコノミー(循環型経済)」をテーマに、
工場で廃棄予定だった"規格外生地"をアップサイクルした製品づくり。
コットン素材の縫い糸(*1)や
ブランドタグ、品質表示ラベル(*2)にこだわり、
金属部品などの異素材を最小限にすることで、
リサイクルしやすい設計のものづくりを徹底して行うことを
アイデンティティとしました。
また、技術力ある工場と連携してプロダクトをつくることで、
修理してでも使い続けたい"いいもの"を生み出していくことと
日本の誇れるものづくりを継承していくことも命題としてきました。
*1 一般に、ポリエステル糸やポリエステル混糸が使われることがほぼ。
*2 一般に、ナイロンなどのてろっとした素材がほぼ。
しかし、実際に取り組みを進めていくと、
アパレル製品を通したサーキュラーエコノミーの実現とは
果たして製品を単一素材(コットン)化させることだけで良いのか、
「リサイクルのために不要ジーンズを回収します」と伝えるだけで良いのか、
などたくさんの疑問にぶち当たります。
一人で舵をとっているLDUは、その都度歩みを止めながら考え、
うだうだしながら、現在までやってきています。
そのなかで最初に考えた「答え」は、
"物理的な循環"を描いていくためには、同時に
それを支える人の"感情的な循環"も同時に生み出していかなくはならない
ということ。
つまり、どれだけリサイクルしやすいデザインにしたところで、
リサイクルしたいとまで感じてくれる使用者の想い(感情)がなくては
ゴミ箱に捨てられてお終いになりかねないということです。
LDUが考える"循環"とは、
上図のように、"物理的な循環"と"感情的な循環"を同時に満たし、
かつ、この循環を実現させる国内のものづくりが生き続けることによって
成立するのだと再定義しました。
また、2021年頃からアパレル業界のリサイクル素材への
注目が一気に高まり、それをみるにつけ、
果たして「リサイクルすること」がどれだけ重要なのかと考えました。
リサイクル素材を生み出すために、
リサイクルしなくてもよかったかもしれない(規格外)生地が
リサイクルに回されたり、リサイクル素材で作られるものが、
再びリサイクルしやすい設計にはなっていないなど、
本質から外れたものを見ることは増えました。
LDU製品は全く例外と言い切るつもりはありません。
しかし、そうした本質を明らかに外した製品とは
きちんと線を引いていくために、
リサイクルはあくまで製品の一生において最後に待ち受ける
セイフティネットのようなものであって、
何よりもまず生み出された製品そのものを
修理しながら使ってもらえるような「最高品質」で製作することが
最優先だということを確認しました。
こうして現在、LDUが目指しているのは、
"消費されないものづくり"、
結局は使い手が、最初に手にとった時から感情を揺り動かし、
その感動を持続させながら、永く使ってもらえるクオリティで
製品をつくることです。
そして、そのためにいま挑戦しているのは、
製品の一部ラインを自社生産し、
「企画・販売」から「企画・生産・販売」を一貫しておこなう
アトリエ兼レーベルへと進化することです。
自社生産へ切り替えることで、
受注生産も可能になって無駄が減るとともに、
手仕事を織り込んだ
より愛着の沸いてくるようなものづくりができると考えています。
つらつらと2年半の変遷をざっくりと振り返り、
現在進行形のLDUのあり方を書いてみました。
今日はここまでとして、
また追ってひとつひとつのトピックを深掘っていきます。
Yoshiyuki Ikegami